
株式会社Vent計画設計室の非住宅木造: 保育園
ほぼほぼ100%、住宅の設計しているVent計画設計室ですが、時々保育園・店舗・体育館と非住宅といわれる建物の設計に関わらせていただくことがあります。
その中でも保育園はお母様が、大事に大事に、おなかの中で小さな命を育み、そして1年、悩みながら癒されながら、これ以上に大切に思えるものはないと感じながら育てたわが子を初めて、他の人の手に預ける場所です。どの施設より大切に設計することが求められる場所だと考えています。
Vent計画設計室は全員が子育て経験を持ちます。私たちは、ご依頼主の方とともに、子供を安心して預けられる園舎を子どもを預ける親の立場にも立って設計していくことができます。

1)保育園への思い
〇保育園にわが子を預けるということ
私(遠藤)が第一子を産んだ頃はまだ、育休制度も整備されておらず、出産後2カ月半で、まだ何もわからない乳飲み子を保育園に預けて職場復帰することになりました。
その日から、まだ半分眠っている生後2ヶ月の娘を、保育園の玄関で、保育士さんに預ける生活が始まりました。車からわが子を抱き起して、園長先生のお母さんにあたるおばあちゃん先生の腕に手渡します。「お母さん、行ってらっしゃい、がんばってきてね」と背中を押されて車に戻り、勤務先に向かいます。娘はおばあちゃん先生の腕の中でニコニコと私を送ってくれます。後ろ髪を引かれるというのは正にこんな気持ちを言うのでしょう。母親の私は涙があふれて、前が見えずうまく運転ができない、そんな日々が続きました。
初めてわが子を保育園に預ける…お母さまたちは皆さんこんな思いをされているのだと思います。
おばあちゃん先生の笑顔と「お母さん、心配だろうけど、大丈夫よ、ニコニコ元気にしてるわよ」という言葉に支えられて、5年間…。娘は大きくなっても玄関でのやり取りは毎日、同じに繰り返されました。娘はずっと笑顔で保育士さんと一緒に「お仕事がんばってね」と私を送ってくれ、私はと言えば1カ月もすると、玄関を離れると仕事モード。涙を流したことなど嘘のように、後ろを振り返ることもなく、心配することなく、保育園から仕事場に向かうようになっていました。残業でお迎えが遅くなると、大好きな保育士さんに三つ編みを編んでもらいながら、安心しきって、私の迎えを待っていた娘。引っ越すことになり、年長までお世話になることはできず、我が家の長女は当時まだ無認可だったこの保育園で大きくしてもらった。4歳違いの次女も半年間この保育園にお世話になり、その後、引っ越し先の保育園で未満児からお世話になりました。そこでは若い元気な保育士さんに大変よく面倒をみてもらいました。そこでもやはり、思い出すのは朝の受渡しです。先生と娘の元気な「お母さんがんばってね、行ってらっしゃい」の声に送られて、やはり、まったく後ろを振り返ることなく毎日仕事に向かっていました。
もう何十年も前のことになりますが、今でも、涙があふれてしかたなかった、初めて長女を保育園に預けた日のことは、昨日のことのように思い出します。おばあちゃん先生の笑顔に助けられ、支えられて、仕事を続けてこられたことを思うと今でも胸が痛くなります。
保育園に毎日子供を預けて働いているお母さんたちが仕事にしっかり向き合うための、安心して子供を預けられる場所を私たちは作っていきたいと思っています。
毎朝、保育士さんに支えられ、笑顔で仕事場に向かうことができるように。
〇保育園は第2の我が家
自宅以上に心地よい園舎を作りたい
まだはいはいしかできない小さな子どもが初めて経験する我が家以外の場所。
保育園を設計する折、私はいつも玄関を大切にしたいと考えています。東から朝日がさんさんと差し込む誰もが元気の出る広がりのある空間を作りたいと思っています。
お母さんがわが子に手を振って、元気に「バイバイ」が言える場所であり、保育士さんが子供と一緒に「お母さん行ってらっしゃい、大丈夫ですよ」と声がかけられる場所。そんな玄関を作り、お母さんに安心を届けたいと考えています。
少人数の保育園も、大規模な保育園もそこに通う子供や親御さんの思いは一緒だと思います。まだ1歳にならないわが子を預け、一日仕事に向かわなければならない母親に安心を提供できる保育園を作りたい。それは第二の我が家、そこに通うこどもたちが、家にいるのと同じように過ごすことができ、より「心地よく」過ごすことができる園舎を設計したいと考えています。